大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和24年(を)1650号 判決 1949年11月21日

被告人

寺井敏秋

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人池田良之助の控訴趣意は末尾添付の訴訴趣意書のとおりである。

第一点について

公判審理の進行中裁判官がかわつたときは公判手続を更新しなければならないこと刑事訴訟法第三百十五條に明定するところであるが、その公判手続を更新した結果、その以前における公判手続によつて現われた結果と同一である場合に前の公判調書の記載を引用すること、それ自体が刑事訴訟法の精神に反するとは言えない。引用は畢竟前の公判調書の記載と同一の記載がなされたものと同一の効力を有するからである。そして、前の公判手続と後の場合とが全然同一であることはあり得ないとの論難は必ずしも肯定できないし、公判手続で公判調書に記載されたものは公判調書のみによつて証明することが出來るのであつて(同法第五十二條)原審第二回公判調書によると、公判手続を更新した結果裁判長の一定の尋問、檢察官の起訴状の朗読、いわゆる默否権の告示、被告人、弁護人の意見、その他被告人、弁護人に対する質問、檢察官、弁護人の証拠調請求およびこれに対する檢察官、被告人弁護人の意見、裁判所の行つた決定、檢察官の証拠書類の朗読、裁判長の被告人に対し証拠品証拠書類を示して意見を問うたこと、以上の手続および裁判長の取調質問に対する被告人の供述、弁解弁護人の質問に対する被告人の供述等はいずれも第一回公判調書に記載してあるのと同一であるからこれを引用するとの記載があり、公判手続更新の場合における公判調書の記載として欠くるところはないから所論の違法はない。

論旨は採用し得ない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例